廃業を検討の方

会社の解散と清算の手続き

会社を承継する人がいなく、M&Aによる第3者承継もしない場合は、会社の解散と清算を検討しなければいけません。
「解散」と「清算」は、イメージ的には同じように感じますが、法的な手続きにおいては意味合いが異なり、それぞれの手続きも異なります。
また全体的な流れとしては、「解散」までの期間が1つの事業年度となり、ここまでの期間で営業活動は中止となります。
解散日の翌日からは、貸借対照表の残された資産を「清算(処分・分配)」する期間になります。

会社解散とは

会社の解散は、破産になってしまった場合の「強制解散」、最終登記日から12年経過している休眠会社の「みなし解散」などもありますが、オーナー社長が自ら解散する手続きは、「任意解散」と言い、株主総会の特別決議により解散をします。
よって解散とは、会社を消滅するための工程の1つです。

会社清算とは

会社の清算とは、会社の解散に伴い、会社を取り巻く一切の法律的・経済的関係を処理する手続きになります。
資産を換価して、債務があれば弁済し、残余財産があれば株主に分配する手続きになります。
会社は、清算手続きの結了をもって消滅することになります。

会社解散から清算までの流れ

期日手続き内容税務の手続き
株主総会の2週間前取締役会の決議
  • 解散についての臨時株主総会の通知
 
解散日株主総会の特別決議
  • 解散の決議
  • 清算人の選任
  • 役員退職慰労金の支給の決議
解散日までが1つの会計期間となるため、通常は月末とする。
解散日から2週間以内解散・清算人の登記
  • 解散の登記手続きを司法書士が行う
 
解散日後遅滞なく株主総会の普通決議
  • 解散の日の財産目録、貸借対照表の承認
解散届」を税務署へ提出
解散日から2カ月以内債権者に対する公告・催告
  • 「知れている債権者」には、個別に催告
  • 簿外の債権者には、公告の手続き
解散確定申告」を税務署に提出
*期限延長特例あり

清算中の事業年度から清算結了までの流れ

期日手続き内容税務の手続き
清算事業年度の終了より2カ月以内株主総会の承認
  • 解散日の翌日から1年間が1つの事業年度となります。
清算事業年度の確定申告書の提出
残余財産の確定日残余財産の分配
  • 財産を現金化して、債務の弁済の見込みがついた日
みなし配当が生じる場合は、「配当通知書」の発行
株主総会の承認
  • 清算人が決算報告を作成し、株主総会の承認を得ます。
 
決算報告の承認日から2週間以内清算結了の登記
  • 清算結了の登記手続きを司法書士が行う
遅滞なく「清算結了届」を税務署へ提出
残余財産の確定日より1ヶ月以内清算確定申告書
  • 清算結了の日を期末とした確定申告書の提出
清算確定申告書」の提出
清算結了の登記から10年間清算に関する重要資料の保存
  • 清算人による会社の帳簿等の重要書類の保存
 

解散の日の翌日からは、「清算事業年度」となり、解散の日の翌日から開始される各1年間が1つの事業年度となります。
清算手続きに時間を要する場合は、清算事業年度が2年目、3年目になることもありますが、早期に残余財産が確定して分配できた場合は、その時点で清算結了をして会社は消滅します。

会社の解散・清算の税金の注意点

会社の解散・清算の手続きで気を付けたいのが税金の問題です。
清算にあたり多額の現預金を株主に分配した場合には、資本金を超える部分については、「みなし配当」として、最高55%の所得税が課税されます。
給与や役員退職金の支給など、課税の優遇措置を受けながら、徐々に預貯金を払い出す必要があります。

役員退職金の支給

長く会社を経営してきたオーナー社長にとって、必ず利用して欲しいものとして、役員退職金の支給が挙げられます。
役員退職金は、基本的に支払った法人側では全額損金にできます。
受取ったオーナー社長の所得税の計算では、退職所得控除額を控除し、さらに2分の1を乗じることができます。
ただし、役員退職金は、いくらでも支給してよい訳ではありません。
法人税法上、役員退職金は「社会通念上、相当かどうか?」という基準があり、不相当に高額な部分は損金とは認められません。
不相当かどうかという判断基準は、明確には定められておらず、次の3つがポイントになります。

  • 退職の事情
  • その法人に従事した期間
  • 同じくらいの規模の同業他社の水準

これでは抽象的なので、一般的には「功績倍率法」により計算します。

1.功績倍率法による役員退職金の計算方法

役員退職金 = 最終月収 × 役員在任年数 × 功績倍率

このうち「最終月収」と「役員在任年数」は、わかりやすいと思います。
「功績倍率」については、各役職により2倍~3倍が一般的な水準とされています。

功績倍率の一例

役職功績倍率
社長・会長3.0
専務2.5
常務2.3
その他の役員2.0

2.役員退職金の損金算入時期

役員退職金を損金(経費)にできるタイミングは、「株主総会の決議」があった時です。
(債務確定があった時です。)
ただし、役員退職金を実際に支払った日の属する事業年度で損金とすることも認められています。
これにより、解散の事業年度で支給するか又は清算の事業年度で支給するかで税務上の有利・不利がある場合があります。

3.役員退職金を受取った社長の税金

役員退職金を受取った個人には、所得税が課税されます。
ただし、給与などに比べると、とても優遇されています。
基本的には、次の算式により計算します。

① : 退職所得の金額 = (退職金 - 退職所得控除額) × 1/2
② : ① × 所得税率

「受取った退職金」から「退職所得控除額」を控除し、さらに2分の1を乗じます。<退職所得控除>

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数
20年超800万円 + 70万円×(勤続年数-20年)

得税における退職金の計算は、「分離課税」ですので、他の所得と分離して、①で計算した金額に所得税率を乗じます。
(給与、不動産、事業などの他の所得とは合算されません。)

みなし配当課税

会社の解散・清算に伴い、個人株主が残余財産の分配を受けた場合のその金額には、2つの意味があります。
1つは出資した資本の払い戻しです。
もう1つは利益剰余金を原資とした利益の分配です。
利益を分配する行為は、会社から配当をもらうことと同じなので、残余財産の分配の一部は、「みなし配当」として所得税法上、配当所得として総合課税となります。
(最高税率は、所得税等・住民税で55.945%です。)

残余財産の分配によるみなし配当の計算方法

みなし配当 =(残余財産の分配額 - 資本金に資本剰余金を加えた額)÷ 株式総数 × その株主の保有株式数
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