事業承継とは
事業承継とはどのようなことでしょうか。
会社という組織は、「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)」といって、永遠に続くことを基本としています。
しかし、人の命には限りがありますので、今の社長さんは永遠に自社の株式を保有することができません。
誰かにその株式を承継してもらうときが必ずきます。
それは、自分のためでもあり、従業員のためでもあり、取引先のためでもあります。
今、日本では高齢化社会を背景に、今後10年の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業経営者は約245万人となり、このうち約半数の127万人は後継者が未定の状態です。
仮になんとなく後継者が決まっていたとしても、「明日から社長」という訳には行きません。
長い期間(10年くらいのスパン)をかけて、徐々に後継者にバトンを渡す必要があります。
1.事業承継の選択肢
一口に「事業承継」といってもどのような選択肢があるのでしょうか。
一般的には、次のまったく異なるこれらの5つの選択肢が考えられます。
- 子供に継いでもらう方法(親族内承継)
- 社員に承継させる方法
- 社外から後継者を招いて承継させる方法
- M&A(外部に株式を売却)
- 廃業
これらの中で、なんといっても一番分かりやすく、社長さんの心情的にも受け入れやすいのは、子供が会社を継いでくれる場合だと思います。
反対に社外から後継者を招く事は、あまり現実的ではないかもしれません。
事業承継のフローチャートは、次の1番大切な質問からスタートします。
「後継者は決まっていますか?」
事業承継のフローチャート
2.株(出資)の承継方法
株(出資)を承継させる方法は、「売買」「贈与」「相続」の3つしかありません。
ここで問題となってくるのが、「会社の株価」です。
特に社歴が長く業績の良い会社は、株価(未上場株式)が高額になっている場合があるため、承継させる方法を検討しなければなりません。
また、承継させる相手によって税務上の価額が異なるので注意が必要です。
株価が高いことによる検討事項
後継者あり | 後継者なし | |
---|---|---|
株価が高い | 承継方法の検討 | M&Aの検討 |
株価対策が必要 | ||
株価が低い | 特に問題なし | 特に問題なし |
このように会社の株価が高い場合は、承継方法や株価対策が必要です。
反対に株価が低い(純資産がマイナスなど)場合は、問題点は少なくなります。
例えば、後継者が決まっていて、株価が低い場合は、「贈与」や「売買」が比較的自由に実行できます。
3.株価が高い会社の問題点
株価が高い会社とは、「税務上の株式の評価額」が高い会社をいいます。
中小企業の株式はどのように評価されるのでしょうか。
上場企業のように「市場価格」がある株式はその価値がわかりますが、中小企業の場合は、「市場価格」がありません。
一般的には、相続税の「財産評価基本通達の未上場株式の評価」を基礎として、株価を算定します。
その結果、株式の評価が高い場合は、次のような事が検討事項となります。
株価が高い場合の問題点
- 社長の相続の時には、莫大な相続税がかかる。
- 生前贈与しても莫大な贈与税がかかる。
- 後継者にすべて相続させた場合は、他の相続人の遺留分の問題がある。
- 後継者に売買した場合には、社長にキャッシュが入るため、別の相続税対策が必要になる。
このように事業承継は、承継方法を決定するだけでも大変なのに、株価が高い場合は、さらに問題が複雑化します。
例えば、やっと長男を後継者に育成したけど、株価が高くて贈与できない、さらには主な財産が株式のみで他の相続人の遺留分を侵害してしまっている場合などです。
また、父と子供の気持ちの部分(親は継いでほしいが、子供は継ぎたくないなどの心情的な食い違い)がハードルになる事もあります。
これらの問題は、一朝一夕では解決できず、ある程度の時間をかけて徐々に調和していくことになります。