自社株の価値と税務上の時価について

ここでは、自社株の価値と税務上の時価について解説したいと思います。

オーナー社長が未上場株式を保有したまま死亡した場合には、その未上場株式には相続税が課税されます。
生前に親族に売却した場合には、株式の売却として譲渡所得税が課税されます。
また、これらの取引で適用される未上場株式の「時価」の考え方も相続税・所得税などの税目により異なります。

自社株の価値と計算方法

親族(子供など)に、会社を承継させる場合に大切となってくるのは自社株の価値です。

オーナー社長の中には、自社株に相続税が課税されることをご存知ない方もいますが、そんなことはありません。
オーナー社長にとっては、自社株も立派な個人の財産になります。
社歴が長く、業績が良い会社ほど、自社株の評価額は高くなる傾向にあります。
シンガポールやオーストラリアのように相続税がない国であれば、事業承継の問題はそこまで複雑にならないかもしれませんが、日本においては切実な問題です。

それでは、中小企業の株式の評価額はどのように評価されるのでしょうか?

「相続」や「贈与」の時には、相続税法の「財産評価基本通達」に基づいて計算します。
これを「相続税評価額(相続税法上の時価)」と言います。

一方で、「譲渡(売買)」の時は、売主(個人)は、「相続税評価額」に「一定の制限」を考慮して計算した「所得税法上の時価」により売却したものとして、譲渡所得の計算をします。
また、売却の相手先が法人の場合には、「法人税法上の時価」も考慮して取引をしないと税務上問題となる場合があります。
「所得税法上の時価」と「法人税法上の時価」は、細かな点を除いては、ほとんど同様の金額となります。

基本的に「相続税評価額」の方が、「所得税法上の時価」・「法人税法上の時価」よりも株価が低くなります。
(場合によっては、5倍くらい乖離することもあります。)

これを図にすると次の通りです。

相続・贈与・譲渡により移転する場合の時価と課税関係

原因譲渡先内容時価譲渡人の課税
(オーナー社長)
譲受人の課税
(後継者)
相続オーナー社長に相続発生相続税評価額相続税
贈与オーナー社長から後継者へ贈与相続税評価額贈与税
譲渡
(売却)
個人オーナー社長から後継者へ譲渡相続税評価額譲渡所得税※1
他社オーナー社長から後継者の設立した新会社へ譲渡所得税法上の時価譲渡所得税※2・3
自社オーナー社長から自社へ譲渡(金庫株)所得税法上の時価みなし配当課税※2・3

※1 時価よりも低い価額で譲渡した場合は、後継者に贈与税の問題が生じます。

※2 時価よりも低い価額で譲渡した場合は、譲受法人に受贈益の問題が生じます。

※3 譲受法人の受贈益は「譲渡価額」と「法人税法上の時価」の差額となり、法人税等の課税対象となります。「所得税法上の時価」と「法人税法上の時価」は、細かな1点を除き、ほぼ同じ計算方法で算定されます。

ちなみにこれらに基づいて計算した税務上の株価は、M&Aなどの時に会社をいくらで売却できるかという考え方とはまったく異なります。

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